MBAとは何なのか?:経営学修士ではない?

さて、先日、本サイトTINATECH内の記事ランキングで「MBAの難易度」を取り上げたこちらの記事がIELTS関連の記事を抜いて1位となり、その後も安定してアクセスを集めています。

かつては「一部のエリート」というイメージもあったMBAという選択ですが、現在ではキャリアアップやスキルアップの手段としてビジネスパーソンの選択肢に挙がるオプションの1つとなりました。

MBAというオプションを検討する際、よく取り上げられるトピックの1つに「海外MBAか?国内MBAか?」といった視点があります。一口にMBAと言っても両者は全く異なるので、これも追って記事にしたいと思っていますが、そもそもその前に「MBAとは何なのか?」といった点を明確にしなくてはいけません。

Tina

この点、非常に曖昧に捉えられている気がします。

今回はMBAという学位】について考えます。

Tina

MBAは資格でなく学位ですよ…(念の為)

関連ワード】海外MBA/MBAの定義/MBAとは/キャリアアップ/キャリアチェンジ/日本型MBA/収入アップ

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目次

MBAとは:実践する教育モデル

MBAとは「Master of Business Administration」の頭文字をとったものです。

世界初のビジネススクールはアメリカのペンシルベニア大学で1881年に設立されたウォートンスクールで、その後1908年に設立されたハーバードビジネススクールにおいて、ケーススタディをベースにした「実践」に重きを置く教育モデルが発展を遂げ、現在のMBAの基礎が確立されました

Tina

MBAの本場はアメリカです^^

ウォートンスクール設立当初は、経営の理論研究がメインでした。しかし、不確定要素だらけの現実世界で経営的判断を迫られる時、理論は時に無力です。一方で、正しい判断を下す上で経営理論は必須の知識です。つまり、理論だけでは役に立たないけれど、理論なくして判断もできません。

「理論を学んだ上で実践してこそ意味がある」という考えのもとにMBAという学位が存在します

事例を中心に学ぶケースメソッドというプログラムを確立させたハーバードビジネススクールは現在もMBAの中核を成すビジネススクールで、世界各国のビジネススクールに教材を提供しています。

Tina

ケーススタディはHarvard business reviewのサイトで入手できます。基本的には有料ですが「Harvard case study」で検索するといくつかフリーで見られるケースもヒットすると思うので、見てみて下さい^^

Tina

MBA世界三大ランキングFinancial Times、QS、Economist)で国別の勢力を確認すると、現在も上位の大学の多くはアメリカにあり、本場の力を見せつけています。地域別でみると上位はほぼアメリカもしくはヨーロッパ諸国が占めていて、米国MBAと欧州MBAが2大勢力ですが、例えばフランスの超名門INSEADはハーバードビジネススクールの卒業生が創立したビジネススクールであり、やはりMBAの歴史はアメリカに有り…といったところです。

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MBAは経営学修士じゃない?

MBAの日本語訳として「経営学修士」と訳されているのをよく目にします。

が、この解釈がMBAを非常に曖昧なものにしています

MBAを「大学院で経営学という学問を修了した者に与えられる学位」と認識してしまうと、MBAの本質を見失ってしまいます。そもそも、MBAホルダーは経営学の専門家ではありません

MBAというのはある一分野に特化した学問ではなく、ビジネスリーダーに必要な知識や資質を養う場です。いわば経営におけるジェネラリスト養成の場なので、一つの学問を究めることとは対極に位置します。とは言え学位でもあるので、日本語にするとすれば、「経営管理学修士」でしょうか。

Tina

Master of Business administrationですからね。

ちなみに、この「学位=degree」ですが、欧米では明確にacademic degreeprofessional degreeという2つの概念があって、明確に区別されているんです。前者は日本でいう所謂「学位」に相当するもので研究学位と訳されます。後者は職業学位といって明確な職業や職域に就くための実践を学んだ者に与えられる学位です。

MBAは職業学位です。経営者養成のための専門教育です。

教育システムというのはその歴史も含めて国や地域によって異なるものなので、欧米で生まれたMBAというプログラムを日本のシステムに当てはめることに無理があると言えばそれまでですが、実際にMBAという呼称を用いてプログラムを開講している大学が国内に多く存在する以上、本質を理解しておく必要があります。

Tina

日本の教育システムに「ビジネススクール」にぴったり相当するものがないですよね。ビジネススクール=経営大学院と勘違いしている人も多いのですが、これも間違いです。ビジネススクールは、大学院課程だけでなく、学部課程も学位に相当しない短期プログラムのようなものも提供します。ビジネススクールの大学院課程にしても、MBAだけでなく、研究学位としてファイナンスや会計学といった特定の分野も幅広く提供しています。そこで例えばマネジメントを専攻した場合は、日本で言う「経営学修士」と同等と言えると思います。

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MBAの定義づけ:何をもってMBAとするか?

MBAが経営者もしくはビジネスリーダー養成のための職業学位であることが分かったところで、また一つの疑問が浮かんできます。

何をもってMBAとするか?」です。

日本におけるMBA

これ実は、日本にはMBAに関する明確な基準が存在しません

分かりやすい例で言うと、例えば医学部なんかは、医学部の設置から学位認定まで、国によって整備された明確なルールや全国共通のカリキュラムが存在します。国の定める学校教育法に基づく大学において、医学の正規の課題を修めて卒業した人だけが医師国家試験の受験資格を得ます。

Tina

これが曖昧だと、品質が担保されない医学部が乱立して大変なことになります。国家試験受験資格としても学位は機能しなくなりますね。

もちろん医学だけでなく、他の学問についても「学位」といった称号である以上、文部科学省において明確な規定が存在します。が、MBAについては、日本にそういった規定が存在しないんです

規定が存在しない以上その解釈は各大学に委ねられるため、MBAプログラムとしての質が担保されているとは言い難く、経営学修士との違いに関しても曖昧なのが現状です。

Tina

ちなみにイギリスではQAA(Quality Assurance Agency)という国の機関が、MBAの学位を明確に定義していますMBAを開講する大学は全てその規定に則ったプログラムを提供する必要があり、この仕組みによりイギリスで取得するMBAは国から品質が保証されていることになります。

MBAの国際認証機関:トリプルクラウンとは?

実は日本以外にも、MBAに関する明確な規定が存在しないながらも質の高いMBAプログラムを提供する国は多くあります。

Tina

国内の水準を維持するための基準は定められるべきですが、それはいわば基準に満たないものを排斥するための動きですよね。

ここで少し視点を変えると、そもそもビジネスの世界においてはドメスティックな評価よりもグローバル視点での評価に重きがおかれるべきという考えがあり、MBA教育においてはその教育品質を世界的に保証する「トリプルクラウン」という言葉があります。

各国独自の指標だけではなく、国際的な認証機関によって評価を獲得するというのがMBA界隈のスタンダードになっているんです。MBAにおける世界三大認証機関が以下の3つで、この3つの国際認証を全て取得しているビジネススクールが「トリプルクラウン」と称されます。

  • AACSB: The Association to Advance Collegiate Schools of Business【米国】
  • AMBA: The Association of MBAs【英国】
  • EQUIS: EFMD Quality Improvement System【EU】

世界中にビジネススクールは約15,000校あるといわれる中で、トリプル認証を受けているのは約100校。トップ1%未満です。

2022年2月現在、日本では唯一、名古屋商科大学ビジネススクールがトリプル認証を受けています。

Tina

国内の基準が存在しないため品質がピンキリになっている現状はあれど、それが即ち国内MBAを全て否定することにはなりません。名古屋商科大学の国内初のトリプルクラウン取得は2021年で、他のアジア諸国に比べても大きく遅れをとっていますが、これから増えていくものと思います。

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まとめ

今回は「MBAとは何なのか?」という点について考えてみました。

  • MBAはMaster of Business Administrationの略称
  • アメリカ発祥の教育モデル
  • 実践に重きを置くProfessional degree(職業学位)
  • 日本にはMBAという学位が存在しない
  • 国際認証機関によるトリプルクラウンがMBAの1つの指標

MBAを検討する際、プログラム内容もさることながら、取得できる学位の正確な情報やグローバルな視点での評価については正しく把握しておく必要があります。

アメリカMBAか欧州MBAか?海外MBAか国内MBAか?オンサイトかオンラインか?等々、選択肢が多くあることは喜ばしいことですが、まずは正確な情報収集に努めましょう!

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