本サイトTINATECHでは、「目標達成」のための様々なヒントやエールを発信しているわけですが、目標達成のための道すじを考える際、或いはそもそも目標を設定する際に「データに騙され惑わされる」ことがあります。
こちらの記事で「海外MBAに行く女性は結婚できない」というある方の有難きアドバイスを紹介したのですが、これって一見「ウンウン、確かにそうかも…」と思わせるのですが、実は根拠がありません。
はぁ、もうこの話題…自分で取り上げておきながらグッタリ…
ではなぜ多くの人が納得してしまうかと言うと、相関関係と因果関係をごちゃまぜにしてしまっているからなんです。
根拠のない通説的なもので、こういったものって世の中にたくさんあります。
- 早起きの習慣がある人は年収が高い
- テレビを見せると子供の学力が下がる
- メタボ健診を受ける人は長生きをする
- 偏差値の高い大学に行けば収入が上がる
一見、「なるほど…」と思いませんか?
しかし、上記の事柄の因果関係は全て否定されています。
相関関係にすぎないものを因果関係だと思い込んでしまうと、正しく物事を判断できなくなってしまいます。
※今回の記事は、こちらの書籍を参考に執筆しています。
ご興味ある方は是非!とても面白いです^^
関連ワード:データ分析/統計学とビジネス/データの関連性/データ 誤判断/疑似相関/因果推論/データ 勘違い
相関関係と因果関係って?
「2つの事柄のうち、どちらかが原因で、どちらかが結果である」状態を因果関係があるという。
一方で「2つの事柄に関係があるものの、その2つは原因と結果の関係にないもの」のことを相関関係があるという。
「原因と結果」の経済学ーデータから真実を見抜く思考 (中室牧子,津川雄介 著)
つまり、因果関係を証明するには「ある原因によって必ずある結果が生じる」必要があります。
先ほどの「海外MBAに行く女性は結婚できない」だとすると、女性が海外MBAに行くことで必ず未婚という結果を迎えないといけません。
グッタリしながらも、、引っ張りますよ、この話題…
でも、普通に考えてそんなことないわけです。
MBA在学中にクラスメイトと恋に落ちて結婚する人もいれば、帰国後に全く別の恋愛をして結婚する人もいます。逆に、結婚願望がなく、結婚しないための手段として海外MBAに行ったところで、結婚したい相手が現れて価値観が変わるかもしれません。
何の確実性もないわけです。
では、なぜそうであるかのように惑わされるのでしょうか?
それは、「2つの事柄に一見関係があるかのように見える」のが相関関係だからです。
この例だと、アドバイスをした本人の周囲の海外MBAホルダーには未婚女性が実際に多いのです。因果関係がないにも関わらず何かしらの関連がある場合、それは全くの偶然であったり、他の要因が絡んでいたり、むしろ逆説が存在したりと理由は様々です。
何らかの理由によって相関が生まれているその背景を無視して、通説を真実かのように思い込むことは危険です。
通説を信じることのリスクは?
では、なぜ根拠のない通説に因果関係があるかのように思い込むことが危険なんでしょう?
まず、必ず結果に繋がるわけではない原因を追求することは単純に時間やお金といったリソースの無駄です。
結果に直接つながる他のより重要な要因を落としているわけなので、結果に到達することが難しくなります。
これが例えばビジネスの場合、直接結果に繋がらない施策に予算と人員をつぎ込んでしまうと最悪倒産です。
また、直接結びついていない事柄を忌避することでその先にある何かを諦めるのだとしたら、そんなに勿体ないことはありません。
正当な理由があるなら仕方ありません。
でも、見当違いなことで夢や目標を諦めてはダメです。
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アドバイスを疑う勇気
相関関係と因果関係についてクリアになったところで、同時にこれらを混合してしまっている人が多いことにも気付くかと思います。
相関関係にあると、因果関係になくても「一見すると原因のように見える」からですね。
何かに悩んでいたり迷っていたりする時に、第三者からのアドバイスというのはとても有難いものですが、自分にとって大事な局面であればあるほど、そのアドバイスが根拠のあるものなのかどうかを疑う勇気が必要です。
例えば、達成したい目標が「外資系の企業に転職する」だとして、実際に転職に成功した知人から「周囲で転職に成功した人はみんな朝活をしている」と聞いたとします。
では、せっせと朝活に励めば転職成功に繋がるのでしょうか?
答えは「No」ですよね。
朝活をしたから転職できたわけではなく、たまたま知人の周囲で転職に成功した人の共通のパターンが朝活だっただけです。もしくは学習習慣の問題かもしれません。
朝活自体が悪いわけではないので、成功者を真似て生活パターンを変えてみるというのは生活に新しさを見出す意味で面白いと思いますが、成功するために必要な要素だと勘違いしてはダメです。
この例だと、これくらいは判断できると思われるかもしれません。
でも、これが社会的に地位のある人や信頼している友人・知人からあなたに向けられたアドバイスだったらどうでしょうか。
親身であればあるほど、因果関係にあるかのように思い込みやすくなります。
自分の為を思ってアドバイスをくれている事実に感謝しつつ、客観的に判断する冷静さを持ちましょう。
真実をどう見分ける?
相関関係と因果関係というのは一見して判断しにくいもの(惑わされやすいもの)だということが分かりました。
では、どうやってその2つを見分ければ良いのでしょうか?
「本当に因果関係があるのか?」を検証することを「因果推論」と言いますが、前述の【原因と結果の経済学】の中で著者は以下の3つを疑ってみるという方法を推奨しています。
- 「まったくの偶然」ではないか
- 「第3の変数」は存在していないか
- 「逆の因果関係」は存在していないか
①まったくの偶然
まずは「単なる偶然ではないか?」と疑ってみることです。
上のグラフは「チーズの消費量」と「ベッドシーツに絡まって亡くなった人の数」を示すグラフです。驚くほど綺麗に相関しています…。
が、当然ながら、これは全くの偶然です。
くだらなさ過ぎて誰も騙されないと思われるかもしれません。「チーズの消費量が増えたからベッドシーツによる事故が増えた」なんて誰も思いません。
でも事実、こうしてデータでみると非常に綺麗な相関関係にあります。
このデータを元に「チーズを食べると寝相が悪くなる」と唱えた人がいたとして…どうでしょう。
こうした偶然の一致は意外にも多いのです。
②第3の変数
前述の書籍で著者が「相関関係にすぎないものを因果関係があるかのように見せてしまう厄介者」としているのが、この「第3の変数」です。
「第3の変数」とは、2つの事柄の両方に影響を与えるもので、これにより相関関係にあたかも因果関係があるように誤解を与えてしまいます。
第3の変数になり得るものは1つに限りませんが、例えば、海外MBAと未婚率の両方に影響を与えていると考えられるものの1つに「年齢」はあるかもしれませんね。
海外MBAに行くには、ある程度の職務経験が必要で、更に言うとマネジメント経験が問われます。
日本の年功序列的な環境では、実質そういった経験を経て受験資格が得られる年齢というと、凡そ30代に入ってからというケースが多いでしょう。
年齢が上がる程に結婚する確率は下がると言われているので、キャリア的に成熟してMBAに挑戦する時点で未婚の場合は、そもそもMBAに行こうが行かまいが、未婚率が高い可能性があります。
偶然ではなさそうな相関の場合、この「第3の変数」を考えてみる習慣は大事ですね。
③逆の因果関係
最後が「逆の因果関係」を探ってみることです。
例えば、「信号機の数と交通量の関係」です。
信号機の数が増える程に交通量が増加するという相関データがあるとして、これは「信号機を増やせば交通量が増加する」と言えるでしょうか。
もちろん「No」ですよね。
「交通量が多いから→信号機を増やしている」と考えるべきです。
原因と結果を逆に捉えると全く道理が合わなくなります。
このようなシンプルな例だと分かりやすいですが、仮説が複雑になればなるほど、惑わされやすくなります。
原因と思っていたものが実は結果で、結果であると思っていたものが実は原因である状態のことを「逆の因果関係」と呼ぶ。
「原因と結果」の経済学ーデータから真実を見抜く思考 (中室牧子,津川雄介 著)
因果関係かどうかを検証する際は、「逆の因果関係」になっていないかを疑ってみることも大切です。
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回はデータに惑わされずに本質を捉えるために重要な「相関関係と因果関係」の考え方についてご紹介しました。
筆者自身、この本に出会った時は目からウロコでした。統計学の難解な用語を避けて非常に分かりやすく解説されています。
データから推論される通説を疑ってみるクセをつけると、面白い発見がありますよ^^