「 TOEIC® の基礎知識」の記事で、TOEICの評価方法、採点方式について触れました。ここではもう少し掘り下げて、TOEICの採点方式の謎に迫っていきたいと思います。
TOEICスコアの妥当性、信頼性に関する部分ですね。
TOEICにまつわる噂って沢山ありますよねぇ。
今回はそんな数多ある噂の真実に迫ります^^
【関連ワード】TOEIC 噂/アイテムアナリシス/イクエイティング/TOEIC 過去問が使われる/ 採点方法/勘で塗りつぶし/トーイック/トイック
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TOEICの採点方式
前回の記事でもお話した通り、TOEICスコアの採点方式について、その算出式などの詳細情報は明らかにされていません。
しかし、「採点プロセス」は公表されているんです。
全てがブラックボックスかと言うと、そうではないということです。
これを知っているからと言って予想スコアが算出できるわけでもなければ、得点しやすい裏技があるといったことでもないので、結局のところスコアを上げるためには真摯に勉強に取り組むしかないのですが、TOEICを受験するならば知っておいて損はありません。
この「採点プロセス」については、TOEICの公式HPを探せば辿り着く情報ではあるのですが、とにかく見つけにくいんですよね…。
公式HPを見ていると、筆者はいつも迷子になるんですが…
それ故なのか、TOEICの採点に関しては、「~らしい」という形で色々な噂が飛び交っています。
TOEICの公式HP、コンテンツは充実していると思います。サンプル問題にはじまり、学習サポートやビジネスメールの書き方など、英語学習者にとって役立つ情報が満載です。意外とHPを活用している人が少ないのですが、勉強の合間に覗いてみてください。何かヒントが見つかるかも^^
採点プロセスのキーワードは「アイテムアナリシス(Item Analysis)」と「イクエイティング(Equating)」です。
「イクエイティング」は前回の記事でもお話しましたね。TOEICのスコアは単純に正答数の足し算の合計ではなく、受験回の難易度によるスコアの変動を避けるため、「スコアの同一化=イクエイティング」と呼ばれる統計処理によって算出された換算点であるということでした。
今回は、TOEICの採点方法にまつわる噂から、この2つのキーワードに迫ります。
難しすぎる問題はカウントされないって本当?
「難しすぎる問題はカウントされない」:本当です。
ここで考えて頂きたいのは、「難しすぎる問題」というのが英語力を測るのに適切なのか?という点です。
「難しすぎる」ということは、十分に高い英語力を持っていても解けない問題ということです。その理由は様々でしょうが、捉え方次第で答えが変わってしまうとか、辞書の隅っこにしか載っていないネイティブでも解けないようなマニアックすぎる文法問題とか。
いわゆる「悪問」です。
TOEICは公平に受験者の英語力を証明するための試験です。
正しく能力を測定するために適切でない問題は排除する必要があり、そういった問題を抽出するのが「アイテムアナリシス」という分析作業です。TOEICテスト問題の「妥当性」、つまりTOEICという試験が英語の能力を測るのにふさわしい試験であることを毎回分析・検証しているのです。
この分析作業は採点の前後で行われています。
逆に誰でも解けてしまう「簡単すぎる問題」も同様の理由で排除されることになりますね。
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TOEICには過去問が使われているって本当?
「TOEICには過去問が使われている」:本当です。
「え!じゃあ何度も受験すればスコアが上がるのでは?」と思う方がいるかもしれませんが、残念ながらそういうことではありません。
テスト問題は常に新しいものが作られているのですが、以前に実施した問題の「ごく一部」を意図的に織り込んでいるのです。なぜそういうことをするかというと、難易度によってスコアにブレが出ないように調整するためです。
TOEICの公開テストはこれまで何百回と開催されていますよね。こうしてごく一部の過去問を織り交ぜることにより、過去の試験と比較でき、難易度によるスコアのブレを修正できるのです。
これが先ほどお話した「イクエイティング(スコアの同一化)」と呼ばれる統計処理です。
理論的に、同じ英語力であれば、いつ受験しても同じスコアになります。
こうしてスコア基準の不変性を実現し、信頼性を確保しているのですね。
試験を受けた感触が難しく、落とした問題が多いと感じて落ち込んでいてもスコアが良かったり、スラスラ解けて「初めて全問時間内に解けた!」と喜んでいてもスコアが予想外に低かったりするのはこのためです。
マークシートを適当に塗りつぶしても得点できる?-おまけ-
適当にマークしても1/4の確率で得点できる? :できません。
ここまで、採点方式の2つのキーワード「アイテムアナリシス」と「イクエイティング」についてご説明しましたが、恐らく読者のみなさんが気になっているであろう「選択式のマークシートでは一定確率で正解にあたるのでは」という点について触れておきます。
これも信頼性という観点から非常に気になる内容ですよね。
TOEICのListening&Readingの試験は、3択もしくは4択の選択式です。3択なのはリスニングセクションのPART2の25問のみなので、ここでは4択の選択式テストであるとしてお話します。
まず、多肢選択式のテストにおいては、適当にマークをしても一定数の正解を得る可能性はあります。TOEIC L&Rにおいてはその確率は約4分の1で、200問中の50問位は得点できることになります。
これをテスティングの専門用語で「Chance Score(チャンススコア)」といいます。
しかし、運よく正解できたからと言って得点できるわけではありません。
TOEICの採点方式について、1問5点の「素点方式」ではなく、統計処理を用いた「換算点」であるとお話してきました。それはこの「 Chance Score(チャンススコア)」にも対応していて、特別な換算表を用いてスコアが算出されています。
ですので、例えば問題を見ずに全てAを塗りつぶし、正答数が4分の1であっても、算出されるスコアは4分の1の250点どころか6分の1にも満たないような非常に低いものになります。
尚、この算出方法についてはETS(TOEICの開発元)の独自ノウハウということで、詳細は明かされていません。
面白いですね。ただこの議論については、「全然分からないから適当に全部塗りつぶす」というレベルの話をしているので、ある程度レベルが上がってくると確率論でいつもより正答が多くなり多少スコアが上がる…ということは現実にはありえるかなと思います。ただ、「誤差の範囲」でしょうね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
とても良く考えられた試験ですよね^^
もしTOEICのスコアに不変性がなく、実施回による難易度の差でスコアが上下したり、5年前に取得した600点と今年の600点のレベルに差があるのだとしたら、TOEICのスコア自体の価値はなくなってしまいます。
「英語力の証明」としてのスコアの価値を維持するために、「アイテムアナリシス(=スコアの妥当性の維持)」や「イクエイティング(=信頼性の維持)」といったプロセスを経てスコアが算出されていることが分かりました。
私たちは子供の頃から幾度となく様々な試験を受けてきていますが、正解した箇所の配点の分だけ点数を積み上げていく「素点方式」が殆どです。採点方式に馴染みがない故に「TOEIC採点方式の謎」と言われるのでしょうね。
日本ではTOEICのスコアは絶大な力を持ちます。就職・転職市場では多くの企業で指標が示されますし、受験等でもスコアを活用する大学は数多くあります。「英語力の証明」として、妥当性と信頼性に裏付けられたスコアだからこその価値というわけです。
もちろん試験なので、その日の体調だったり、試験の雰囲気に飲まれてしまったりして、本来の力を発揮できないということはあります。こればかりは、試験自体がいくら理論的にブレを排除しようとも、避けられないことです。試験当日に本来の力を発揮するための工夫などもまた別記事でお伝えしますね^^
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